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2016-07-05

スタートアップファイナンスの時価総額 巨大な企業価値を創造するために

セコイア中庭

投資家と話をするときに欠かせないテーマが時価総額だ。

投資家にとっては、仕入れに当たるので当然低い方がよいと考える。

ただ、時価総額を低くすると、実はリスクを産んでしまいかねないことに気づいている人は少ない。

現在の日本では、Dual Classなど起業家の議決権を増やせる場合は極限られている。起業家の株式シェアが将来さらに薄まった時、今までと同じように、どんなことがあっても自分が支えなければならない会社と心底思えるだろうか?投資契約書では縛れても、人の心は縛れない。だからリスクの芽が生まれてしまうのだ。

一方、会社側で時価総額を高くしたいのは、単に起業家のシェアの希薄化を防ぐためだけではない。スタートアップにとって株式は強力な攻撃力を持つ武器だ。この武器を序盤戦で使い果たしたくない。先々環境の変化は必ずある。そのような時に資金調達や資本提携、あるいは人材採用など、勝てる体制をつくるために株式は威力を発揮する。将来のために1株でも多くとっておきたい。だから、なるべく時価総額は高く決め、発行する株式数を抑えて資金調達したいのだ。

この辺りのこと、株式シェアが起業家や将来の会社の勝負に及ぼす影響について、投資家側の最終意思決定機関ではあまり認識されていない。この影響で投資会社のフロントサイドの人たちは「この時価総額だと投資委員会を通せない」と考えるから、すぐに「時価総額が高いですね」となる。

優先株式は、上場ではなくM&Aの場合には、優先的に回収できるようにしてある。ダウンサイドのリスクを担保している。だから、普通株式より高い株価を許容できるようにしてある。

スタートアップの時価総額の見立て方には様々な方法があり、また人によって考え方が異なるので何が正しいとは言えない。ただ個人的には、シード〜ミドルステージのスタートアップの時価総額を、足元の実績から計算するのは無理があると考える。何に投資するのかというと会社の未来に投資するからだ。将来価値を見立てて、そこから引き直すのが投資の主旨に合っていると思う。

とはいえ、投資家も「はい、そうですか」と高い株価で引き受けて、キャピタルゲインが見込めないのでは引き受けにくい。

となれば、一般論よりも大きな企業価値にするように腐心するしかない。会社の未来は成り行きでできるわけではなく意識して創るものだ。高いと思って引き受けた株価が、将来非常に安かったと思えるような、上場時に途方もなく大きな企業価値となるような、そんな巨大な価値の企業にするために思考を働かせる。

豊かなイマジネーションを持つ起業家と投資家が日本でマジョリティになったら、今までとは異なる、サイズの大きな上場会社がたくさん生まれるかもしれない。

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