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2012-09-10

投資契約書について

投資家から増資を受ける際に、投資契約書を締結するのが一般的です。投資家は、資金の貸付とは異なり、返済期限のないお金を、流通性のない株式と引き換えに投じ、かつ長期的な付き合いになるので、投資家が会社と経営者と予め約束をしておきたいことを書面化したものです。契約当事者は、会社、経営者、投資家であることが一般的です。
 なお、複数の投資家が同時に出資する場合は、投資家間で不平等が起こらないようにしておこう、また、最も多く投資する人には、投資家を代表して取締役を派遣してもらおう、といった約束をするため、株主間契約書になることがあります。

代表的な条項を記載します。

【株式発行と引受け】
ベンチャー企業が株式を発行し、投資家がそれを引受けることを確認する条項です。

【発行会社による事実の表明および保証】
ベンチャー企業が投資を受ける前に開示した資料に嘘偽りがないことや、反社会的勢力とのつながりがないことを表明するものです。なお、事業計画は将来の計画であり、計画通りいかなくとも表明保証違反にはなりません。

【発行会社の特約】
・決算書の提出
・月次決算書の提出
・経営上重要な事柄に関して、事前に通知すること
・経営上重要な影響をもたらす事柄が発生した場合は、速やかに通知すること
・事業計画書の提出
会社情報のディスクローズと会社で起こった重要な事柄について知らせることを約束するものです。
なお、経営上の重要な事柄に関して、事前通知ではなく、事前承認と定めることがあります。しかし、投資者が複数の場合、事前承認を全て得るのに時間がかかり実務に支障が出る危険があるため、例えば取締役を派遣する投資者または最も株式シェアの大きい投資者のみを事前承認者としておき、それ以外の投資者は事前通知に留めておくよう、投資者に相談してよいと思います。

【投資者の新株予約権】
増資や新株予約権付社債を発行する場合は、投資者が優先的に引き受けられる権利を与えるものです。これは、いたずらに増資をすると、投資者の株式シェアが低くなるのでそれを防止するのが狙いです。合理的理由に基づいて増資等が行われる場合、一般的には、投資者はこの権利をむやみに発動することはありません。

【取締役の選任権】
 これは一般的には、VCから取締役を派遣する権利を確保するためのものです。増資の時に最も多く投資する投資者がこの条項を入れることがあります。ただ、この条項が入っていても、すぐには取締役を派遣しないこともあります。

【取締役の選任・辞任】
 代表取締役は投資者の同意なく取締役を辞任できないようにするものです。最重要人物である代表取締役が道半ばで投げ出さないようにするためのものです。ただし、やむを得ない事情または合理的な理由があり、投資者が同意すれば辞任できるようにしているのが一般的です。

【オブザーバー】
 取締役会にオブザーバーとして出席し発言できる権利を確保するためのものです。投資者が投資先の経営状態がどのようになっているかを確認できる機会を得るためのものです。この場合、取締役としての議決権はありません。なお、多数の投資者が取締役会に参加すると、取締役会が投資者への報告会になってしまい、取締役管で実質的な議論ができなくなることがあります。このような場合は、オブザーバー権ではなく、定期的に投資者向けに説明会を開催することを約する条項に変えることも考えられます。

【持ち株処分の禁止】
 投資者の事前の同意がない限り、経営陣等が株式を譲渡することを禁止するものです。経営陣等だけが投資者を出しぬいて株式売却することを防止するための条項です。

【先買権】
 経営陣等が株式を売却しようとする際、投資者が優先して買い取る権利です。

【共同売却権】
 経営陣等が株式を売却する際に、投資者がその売却に参加できる権利です。

【投資者の同時売却請求権】
 Drag Along条項と言われるもので、投資を受けた後、一定期間で何らかの目標値を設定し、それを達成しなかった場合、投資者は株式を売却でき、その時に、他の株主も全員株式売却に応じなければならない、という条項です。投資家の悩みは、会社がうまくいかなかった時にいかにExitするかですが、投資家がM&Aで会社を売却したくとも、株式シェアが過半数以上なければ、M&Aは成立しません。しかしこの条項があれば、M&Aは成立するので、投資家のExitの機会が増えるわけです。

【株式公開の努力義務】
○○年までに株式上場することに向け努力することを記載するものです。

【株式買取り条項】
以下が発生した場合、会社または経営者が株式を買い取る義務を負うものです。
(1)投資契約書に違反した時
(2)上場出来るにも関わらず上場しない場合
(3)○○年以内に上場出来ない時
投資契約書に違反しない限り株式の買取り義務は発生しないので、(1)は許容できます。また、上場できる状況であるにも関わらず上場しないということは、会社が上場する気がないということであり、そもそも投資者との約束を違えることになりますので、やむをえないと思います。しかし、(3)についてまでも買い取る義務を負わせるのは、余程の理由がない限り理不尽と思います。これについては交渉するべきと思います。
私の経験では、(3)のような株式買取り義務の条項を要請される場合というのは、会社が資金繰りに窮しかなり危険な状態で、かつ、他にお金の出し手がいない時など、会社が相当追い込まれている場合が多いと思います。ただ、たまに、しらーと、この条項を入れている投資家もありますので、投資契約書はきちんと目を通しておくべきです。

【最恵待遇】
他の投資者と投資契約書を締結する場合、この投資契約書にない条項はこの投資契約書にも適用するものです。これは将来締結される投資契約書の条項も含まれます。投資契約書にはほとんどこの文言が入っていますので、結果的には全投資者と同一の投資契約書を締結していることになります。

投資契約書は、いろいろと難しい言い回し・単語があり、わかりにくいと思います。詳細については法律家の判断や解釈によるべきですが、一般的な投資契約書では、経営者が投資者に誠実に向き合っていれば、投資者はむやみやたらに権利を行使することもなく、問題は発生しないと思います。投資家側の本質的要望は、「投資家に嘘をつかず、誠実に向き合い、まじめに経営してください」というシンプルなものだと思います。
特別な事情がある会社を除き、誠実に向

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